*「ロザリオシリーズ再録集no.1」サンプル*
※ロザリオシリーズの1−4までの再録です。
時間軸はバラバラですが、同一世界設定。
なお、ロザリオシリーズについてはシリーズ終了後、再録とは別に総集編を発行するかもしれませんので、ご注意下さい。
下のサンプルはシリーズ一作目、「十字架に願いを」の冒頭になります。
三月も半ばを過ぎて、肌に当たる日光は細胞を燻ぶらせ、コンスタントにメラニンを刺激するようになった。
十日前に中等部を卒業したばかりの利央は、高等部進学への準備に追われ忙しい毎日を過ごしてはいたが、今日からはそんな事に構ってはいられなかった。
現高等部に所属する野球部の面々が、一週間の遠征を終えて、昨日帰ってきた。そして今日、高等部の外部グラウンドではその仕上げとして、県外から招いた強豪校と練習試合を行うことになっている。
利央の元に、その報せが届いたのは一昨日の晩だった。遠征先の宿泊地から自分の携帯に連絡をくれたのは、荒くれ者の多い野球部員を見事纏め上げる主将、河合和己だ。
『明後日、高等部のグラウンドで練習試合をする予定だから、迅も誘って見に来るか?』
もう随分長い間皆の顔も見てないだろう、と低音の優しい声は利央に語りかけた。確かに、内部進学とはいえ卒業テストに合格しなければならなかった為、年が明けてからは自由な時間は殆んど取れなかった。和己や慎吾や、むしろ準太でさえ顔を合わせることはあまり無く、考えてみれば本当に久方ぶりに彼らに会う。
(準サンと最後にゆっくり話したの、いつだっけ……)
和己に承諾の返事をして電話を切った利央は、春休みに入って使わなくなった頭を久しぶりに回転させる。
大晦日だ。去年最終日の夜、準太の家に泊まったのを最後にまともに顔を合わせていない。脳裏にふと彼の人の笑顔が浮かんで、とてつもなく会いたくなった。先程和己に頼んで電話口に呼んで貰えば良かったと、深く後悔して、それでも、自分自身を焦らして今日に至る。